このページのまとめ
- 熱化学方程式は、化学反応式にエネルギーの出入りを加えたもの。
- エンタルピー変化(ΔH)が負の値なら発熱反応、正の値なら吸熱反応を示す。
- 反応物や生成物の量、物質の状態によってエンタルピーの値は変わる。
~先生と生徒の会話~

化学の授業で「反応エンタルピー」について学んだときに、「熱化学方程式」っていうのが出てきたんですが、具体的にどういうものなんですか?普通の化学反応式とは違うんですか?



良い質問だね!「熱化学方程式」は、普通の化学反応式に加えて、反応の際に出入りするエネルギーも含めたものなんだ。普通の化学反応式では、反応物と生成物だけを示すけれど、熱化学方程式では、それに加えて反応でどれだけのエネルギーが放出されたり吸収されたりしたかも記載されるんだよ。エネルギーの変化が重要なポイントだからね。



例えば、水ができる反応式を見てみようか。
2H2(g)+O2(g)→2H2O(l)
これは普通の反応式だけど、これを熱化学方程式にすると、反応エンタルピーが入ってこんな感じになるんだ。
2H2(g)+O2(g)→2H2O(l) ΔH=−572kJ/mol



この「ΔH=−572kJ/mol」というのが反応エンタルピーで、この場合、反応が進むときに572kJのエネルギーが放出されることを示しているんだ。



なるほど、エネルギーが放出されるか吸収されるかも書かれているんですね。じゃあ、吸熱反応の場合も同じように書けるんですか?



その通り!吸熱反応の場合は、エネルギーが外から取り込まれるので、エンタルピーの変化が正の値になるんだ。例えば、硝酸アンモニウムが水に溶けて吸熱反応を起こすときの熱化学方程式はこうなる。
NH4NO3(s)→NH4+(aq)+NO3−(aq) ΔH=+25.7kJ/mol
この場合、反応が進むときに25.7kJのエネルギーが外から吸収されることを示しているんだ。



なるほど、エネルギーが吸収される場合はプラスの値、放出される場合はマイナスの値で表されるんですね。じゃあ、反応エンタルピーとどう違うんですか?



良い指摘だね。実は、反応エンタルピーは熱化学方程式の一部なんだ。反応エンタルピーは、反応のエネルギー変化そのものを表していて、熱化学方程式はその反応エンタルピーを反応式に組み込んだ形だと考えてもいいよ。だから、反応エンタルピーを計算したり測定したりした結果が、熱化学方程式のΔHとして表れるんだ。



それで、エネルギーがどれくらい出入りするかがわかるんですね!じゃあ、熱化学方程式を使うときの注意点ってありますか?



大切なポイントはいくつかあるよ。まず、エンタルピーの値は反応物や生成物の量に依存するんだ。例えば、さっきの水の生成反応では2モルの水ができるときに572kJのエネルギーが放出されるけど、もし1モルの水しか作られない場合は、ΔHもその半分の値になるんだ。つまり、エンタルピー変化は物質の量に比例するってことだね。



あとは、物質の状態にも注意が必要なんだ。同じ物質でも、気体、液体、固体の状態によってエンタルピーが変わるんだよ。だから、反応式を書くときには、必ず物質の状態を明記することが大切なんだ。



なるほど、量と状態に気をつければ、より正確なエネルギーの出入りがわかるんですね。熱化学方程式ってエネルギーの管理にも役立ちそうですね!



そうだね!エネルギー管理や反応の効率を考える上で、熱化学方程式は非常に役立つツールなんだよ。
例題&解答
【例題1】次の反応式に対して、熱化学方程式を作成しなさい。
CH4(g)+2O2(g)→CO2(g)+2H2O(l)
反応エンタルピーは-890kJ/molです。
CH4(g)+2O2(g)→CO2(g)+2H2O(l) ΔH=−890kJ/mol
【例題2】エタノール(C₂H₅OH)の燃焼反応における反応エンタルピーが-1367kJ/molであるとき、反応の熱化学方程式を作成しなさい。
C2H5OH(l)+3O2(g)→2CO2(g)+3H2O(l) ΔH=−1367kJ/mol