このページのまとめ
- 反応エンタルピーは、化学反応中のエネルギー変化を示し、発熱反応ではエネルギーが放出され、吸熱反応ではエネルギーが吸収される。
- 標準生成エンタルピーは、物質が標準状態で生成される際のエンタルピー変化を指し、反応エンタルピーの計算に使われる。
- 反応エンタルピーが大きい場合、エネルギーの変化が大きく、エネルギー源として重要な役割を果たす。
~先生と生徒の会話~

化学反応が進むとき、よく「エネルギーの出入りがある」と聞きますが、それって具体的にどういう意味ですか?それが「反応エンタルピー」と関係しているんですよね?



そうだね、反応エンタルピーは、化学反応の際に出入りするエネルギーを表す重要な概念なんだ。エンタルピーというのは、物質が持つ熱エネルギーのことだよ。そして、反応エンタルピーというのは、反応の前後でエンタルピーがどれだけ変化するかを示しているんだ。簡単に言うと、反応が進むときに放出されたり吸収されたりするエネルギーのことだね。



なるほど、エネルギーの出入りってことなんですね。でも、それはどうやって測ったり計算したりするんですか?



良い質問だね。反応エンタルピーは、一般的に定圧条件下での熱エネルギーの変化として表されるんだ。化学式で書くと、次のように表せるよ。
ΔH=H生成物−H反応物



ここで、ΔHは反応エンタルピーの変化を示していて、これは生成物と反応物のエンタルピーの差だね。もしΔHが負であれば、反応が進むときにエネルギーが放出される「発熱反応」、正であればエネルギーを吸収する「吸熱反応」ということになるんだ。





エネルギーが放出されたり吸収されたりするってことは、反応の温度に影響があるんですか?



その通り!発熱反応の場合、エネルギーが外に放出されるので、反応の周りの温度が上がることがあるんだ。例えば、燃焼反応は典型的な発熱反応で、燃えたときに周りが熱くなるよね。逆に、吸熱反応では、エネルギーが外から取り込まれるから、周りの温度が下がることがあるんだ。冷却パックがその良い例だね。



ああ、だから冷却パックを折るとすぐに冷たくなるんですね!エネルギーを外から取り込んでいるからなんですね。でも、反応エンタルピーの値はどうやって決まるんですか?



反応エンタルピーは、反応物と生成物のエンタルピーの値の差で計算されるんだ。でも、実際に化学反応を行ってエンタルピー変化を測定するためには「標準生成エンタルピー」を使うんだ。これは、各物質が1気圧、25℃の標準状態で生成されるときのエンタルピーの変化のことを指しているよ。反応エンタルピーは、それらの標準生成エンタルピーの値を使って求めることができるんだ。



なるほど、標準状態でのエンタルピーを使って計算するんですね。でも、反応エンタルピーが大きいと、どんな影響があるんですか?



反応エンタルピーが大きいということは、それだけエネルギーの変化が大きいということだね。発熱反応の場合、大きなエンタルピー変化は大量の熱を放出することを意味していて、これはエネルギー源として使えることが多いんだ。例えば、燃料を燃やすときに多くの熱が発生するのは、エンタルピー変化が大きいからなんだよ。



じゃあ、化学工業やエネルギー産業では、反応エンタルピーの大きさを意識して反応を選んでいるんですね。すごく実用的な概念なんですね!



そうなんだ。化学反応はエネルギーの変化に基づいて設計されていることが多いから、反応エンタルピーはとても重要な指標なんだよ。
例題&解答
【例題1】反応エンタルピーが-200kJ/molの反応があるとします。この反応は発熱反応か、吸熱反応かを説明しなさい。
反応エンタルピーが負なので、エネルギーが外に放出される発熱反応です。
【例題2】標準生成エンタルピーが-110kJ/molの反応物Aと、生成物Bの標準生成エンタルピーが-220kJ/molであるとき、反応エンタルピーを求めなさい。
反応エンタルピーは、生成物のエンタルピーから反応物のエンタルピーを引いて求めます。
ΔH=−220−(−110)=−110kJ/mol
反応エンタルピーは-110kJ/molで、これは発熱反応です。