【ノートで学ぶ無機化学】アルカリ金属の性質が9分でわかる!

目次

このページのまとめ

学習のポイント

  • アルカリ金属の単体は還元剤として働き、原子番号が大きいほど還元力が強い。
  • 水酸化ナトリウムは隔膜法や陽イオン交換膜法によって製造される。
  • 炭酸ナトリウムは工業的にアンモニア・ソーダ法によって製造される。

まとめノート

このページでは,アルカリ金属の性質について解説します。アルカリ金属とは,元素周期表の第1族の中で,水素を除く元素の総称です。アルカリ金属の原子は最外殻電子が一つなので,電子を一つ放出して一価の陽イオンになります。化合物では水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムが知られているため,これらの性質を学習していきましょう。

アルカリ金属の単体

概論

アルカリ金属の単体は,電子を放出して還元剤として働きます。原子半径が大きいほど電子を放出しやすく,還元する力が強いことになります。一方,単体の融点・沸点イオン化エネルギーは原子番号が小さいものほど高くなります。これは,原子半径が小さい方がクーロン力が強く働き,結合を切断するのに大きなエネルギーが必要になるからです。また,アルカリ金属の単体は金属でありながら密度が小さいため,軽金属と呼ばれます。

反応性

アルカリ金属の単体は強い還元剤として働き,空気中の酸素や水と反応します。酸素と反応した場合は酸化物,水と反応した場合は水酸化物が生じます。また,空気中・水中で反応してしまうため,アルカリ金属の単体は石油中に保存されます。

水酸化ナトリウムについて

製法

水酸化ナトリウムは,隔膜法や陽イオン交換膜法によって製造されます。陰極で発生した水酸化物イオンとナトリウムイオンが結び付いて,水酸化ナトリウムが生じます。ただし,隔膜法では水酸化物イオンが陽極側に流れ,塩素と反応してしまうため収率が悪くなります。

陽イオン交換膜法では,隔膜法で生じた問題を解決することができます。陽イオン交換膜は陽イオンのみを通す膜なので,水酸化物イオンが陽極側に流れることがありません。したがって,全体の収率が高いまま水酸化ナトリウムを製造できます。ただし,隔膜法でも陽イオン交換膜法でも塩素が水に溶解する副反応は生じてしまうので,注意しておきましょう。

性質

水酸化ナトリウムは,潮解性をもちます潮解とは,固体が空気中の水蒸気を吸着して水溶液になる現象を指します。水酸化ナトリウムは水分子を効率的に吸着できるので,ソーダ石灰として乾燥剤にも用いられています。

また,水酸化ナトリウムは強塩基の一種であり,空気中の二酸化炭素と反応します。中和反応では炭酸ナトリウムが生じ,さらに二酸化炭素を反応させると炭酸水素ナトリウムが生じます。炭酸水素ナトリウムは一般には重曹とも呼ばれています。

炭酸ナトリウムについて

製法

炭酸ナトリウムは,アンモニアソーダ法(ソルベー法)によって製造されます。この手法では,まず初めに飽和食塩水に対してアンモニア,二酸化炭素を加えることから始まります。ここで飽和食塩水を用いるのは,炭酸水素ナトリウムを沈殿させて分離しやすくするためです。また,アンモニアと二酸化炭素で加える順番が決まっているのは,アンモニアの方が水への溶解度が大きく,アンモニア水に対しては二酸化炭素が効率よく溶解するからです。

分離した炭酸水素ナトリウムを熱分解することで,目的物質の炭酸ナトリウムが得られます。ここまでで目的の物質は得られているのですが,アンモニアを再利用するために手順3〜手順5を実施します。具体的には,炭酸カルシウムを熱分解して酸化カルシウムにし,水を加えることで水酸化カルシウムを得ます。これを用いて弱塩基遊離することで,アンモニアが再生産されます。アンモニアソーダ法の全体での反応式は頻繁に問われるので,よく覚えておきましょう。

性質

炭酸ナトリウムは,風解性をもつ物質として知られています。風解とは,結晶中の水和水が空気中に逃げていく現象を指します。炭酸ナトリウム十水和物は,空気中に放置すると一水和物になります。

また,炭酸ナトリウムはガラスの主成分である二酸化ケイ素を溶解します。したがって,炭酸ナトリウムはガラスを加工するために用いられます。

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この記事を書いた人

京都大学工学部工業化学科卒業。
過去に某有名学習塾にて化学科講師として勤務。対面授業,オンライン授業共にのべ2000人以上の生徒を指導し,多くを東大・京大・国公立医学部へ排出。

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