このページのまとめ
- 水素は宇宙で最も多く存在する元素であり、非常に軽く反応性が高い。
- 水素の製造には、金属と希酸の反応、水の電気分解、化石燃料を使った水蒸気改質法などがある。
- 環境に優しい水素製造としては、水の電気分解が注目されている。
- 水素にはプロチウム、デューテリウム、トリチウムという3つの同位体があり、それぞれ異なる特性を持つ。
~先生と生徒の会話~

水素って、宇宙で一番多い元素だって聞いたんですけど、どんな特徴があるんですか?



その通り、水素は宇宙でもっとも多く存在する元素なんだ。とても軽くて、元素の中で一番シンプルな構造をしている。原子番号1で、陽子が1つ、電子が1つしかないんだよ。しかも、太陽や星がエネルギーを生み出しているのも水素の働きによるんだ。太陽は水素を核融合させてヘリウムに変えるときに、大量のエネルギーを放出しているんだよ。



なるほど、宇宙全体で重要な元素なんですね。でも、地球上では水素ってどうやって手に入れるんですか?



水素を作る方法はいろいろあるよ。例えば、実験室では金属に希酸を加える方法がよく使われている。亜鉛に希硫酸を加えると、水素ガスと硫酸亜鉛ができるんだ。これは簡単に実験できる方法で、亜鉛が硫酸と反応して電子を放出し、その結果、水素ガスが発生するんだ。



実験で水素を作ることができるんですね!それって具体的にどんな反応式になるんですか?



亜鉛と希硫酸の反応式はこうなるんだ:Zn+H₂SO₄→ZnSO₄+H₂



亜鉛が硫酸に溶けて、水素がガスとして出てくるんだ。簡単で効果的な方法だけど、工業的に大量に水素を作るには別の方法が使われるんだ。



それって、どういう方法ですか?



工業的には「水蒸気改質法」という方法がよく使われている。これは、天然ガスなどの化石燃料を使って水素を取り出すんだ。具体的には、メタンと水蒸気を高温で反応させて水素を得るんだけど、残念ながら二酸化炭素も発生してしまうんだ。だから、クリーンな方法ではないんだよ。



二酸化炭素が出ちゃうのはちょっと問題ですね。もっと環境に優しい方法はないんですか?



最近注目されているのは「水の電気分解」という方法だよ。水に電気を流すと、水が水素と酸素に分解されるんだ。これは水と電気さえあればできるから、環境に優しいエネルギーとして期待されているんだ。ただし、効率の面ではまだ改良の余地があるんだよ。



なるほど、水素を作る方法にもいろいろあるんですね。水素って他にどんな特徴がありますか?



水素は非常に反応性が高いんだ。例えば、酸素と簡単に反応して水を作るし、窒素と反応してアンモニアを作ることもできる。アンモニアは肥料として農業で使われるから、実は水素は農業にも貢献しているんだよ。それに加えて、酸化還元反応でも重要な役割を果たしている。例えば、金属の精錬にも使われることがあるんだ。



水素がこんなに多方面で役立つなんて知りませんでした。それに、「同位体」っていう言葉も聞いたことがあるんですが、水素にも同位体があるんですか?



あるよ。水素には3つの同位体があって、それぞれ少し違った性質を持っている。普通の水素は「プロチウム」と呼ばれていて、これは陽子1つ、電子1つだけのシンプルな構造だよ。もう一つは「デューテリウム(重水素)」で、陽子1つに加えて中性子が1つあるんだ。この重水素は重水として原子炉で使われることがある。最後に「トリチウム(三重水素)」というのがあって、これは陽子1つに中性子が2つあるんだ。トリチウムは放射性同位体で、核融合の研究なんかで使われているんだ。



それぞれ中性子の数が違うんですね!同じ水素でも全然違う使われ方をしているんですね。



そうなんだ。化学的には同じ水素だけど、中性子の数が違うだけで性質が変わってくるんだ。だから、水素の同位体はそれぞれ特定の用途に使われているんだよ。
例題&解答
【例題1】
亜鉛に希硫酸を加えて水素が発生する反応の化学式を示しなさい。
【解答】
Zn+H₂SO₄→ZnSO₄+H₂↑
亜鉛と希硫酸の反応によって水素ガスが発生する。
【例題2】
水の電気分解で生成される物質と化学反応式を示しなさい。
【解答】
水の電気分解では、水素ガスと酸素ガスが生成される。反応式は以下の通り。
2H2O→2H2+O2